ご挨拶

社団法人 物理探査学会会長
内田利弘(産業技術総合研究所)
物理探査学会では、2008年の創立60周年を機に「社会に貢献する物理探査」を活動のテーマに掲げています。それは、私たち物理探査に関わる技術者が、種々の分野における物理探査のニーズを理解し、それに対応した技術開発を進め、適切な調査事例を少しずつ積み重ねていくことによって初めて実現できるものです。そのような活動の中で、私たちの自己の能力や経験を深めることができると思います。
今般、学会の事業に大きく関わる出来事として、東北地方太平洋沖地震が発生しました。これまでの予想を覆す規模の津波と、原子力発電所の事故が日本国民全体に大きな危惧と試練を与えています。私たち物理探査関係者が、今回の地震災害に関して貢献できることには何があるでしょうか。地震防災は物理探査の適用分野の中でも特に重要なものの1つです。これまで、当学会では、地震防災研究会での活動を初め、多くの会員の方々が地震災害に関する研究や調査に携わってこられました。今回の大震災については、地震や災害が発生した現象と原因の理解に役立つ物理探査情報の提供や、今後の復興に貢献する物理探査適用の提案などを進めていく必要があると思います。
国内の物理探査の最大のユーザである土木・建設関係における需要は、公共事業費の削減に伴って低下を続けています。それに対し、今回の大震災でもあるように、重要構造物の安全性評価や維持管理の業務は、安全な国民生活に対する施工者・管理者のコンプライアンスの厳格化に応じて、物理探査を用いた監視技術のニーズは増えていくものと思われます。
また、物理探査に関わる事項で、昨今の国際情勢から読み取れる問題として、エネルギー資源、鉱物資源、地下水資源といった国民生活の基盤となる地下資源の供給が、世界各国のナショナルセキュリティ政策の鮮明化によって、将来的に大変不透明になっていることが挙げられます。地下資源の探査・開発には物理探査が不可欠ですが、技術的にも政治的にもより難しい環境下での物理探査の適用に迫られるものと予想されます。
これらの社会のニーズに対応し、学会として効率的な活動を進めていくため、理事会では、以下の4項目を重点課題としています。
(1) 社会への情報発信の強化
物理探査の適切な適用事例を蓄積し、それらの成果を物理探査のユーザの方々に発信していくことが重要です。それには、物理探査が使われる分野の情勢変化やニーズを理解し、問題解決を意識した技術開発が必要です。ユーザとなる業界や公的機関への継続的な情報提供を行い、受託研究などの実施に努力したいと思います。
(2) 人材育成、技術普及の推進
これからの物理探査業界を支えていただく若手技術者や、将来の学会を支える地球科学関係の学生を対象とするセミナーの充実を図ります。また、技術普及や啓蒙を目的とするテキスト等の出版を企画したいと思います。
(3) 会員サービスの向上
先進的な研究成果の学会発表を目指す会員から、調査業務に必要な物理探査の技術情報を期待する会員まで、会員の様々なニーズに対応したサービスが求められています。そのため、学会の会誌群の改革、ウェブを介した会員への迅速な情報提供やオンライン機能の強化をさらに促進したいと思います。
(4) 国際化の推進
これまで、定期的に開催してきたSEGJ国際シンポジウムを2011年11月に京都で開催します。また、2004年から継続してきたオーストラリアおよび韓国の物理探査学会との共同号出版を発展させ、2012年に新しい共同英文誌を発刊する予定です。国内の技術開発成果を海外へ発信して当学会の国際的プレゼンスを高め、学界・業界のグローバル化の流れに対応しながら、海外における物理探査ビジネス機会拡大の第一ステップとすることが期待されます。
国の政策や社会の情勢は激動しています。将来、社会が直面すると予測される様々なリスクへの対処について、少しでも物理探査が貢献できればいいと思います。また、会員が互いに協力しながら、柔軟に対応することによって、業界・学界とも成長を続けることを期待しています。今、私たちが実行すべきことについて、是非、会員の皆様のご意見やご議論をお願いしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。









